What We Do

若者の「声」が響く社会へ

Voice, rather than votes, is the vehicle of empowerment. 「votes( 投票 ) ではなく voice( 声 ) がエンパワーメントの手段である。」(サイモン・チェンバース)

若者の社会参画を通じた能動的市民性の涵養

 私たちは日々生活している中で,自分や身の回りの人の困りごとや悩みごとから「もっとこうなったらいいのに」と思ったり,時に「自分に何かできることはないかな」と思ったりします。この流れで「政府はもっとこういうことをすべきだ」と考えたりすることも珍しいことではありません。他の地域や国の様子を知って,「我がまちもそうなったらいいのに」と思ったりすることもあるでしょう。また,将来に目を向けた時,「こんな未来社会の中で私は過ごしたいな」と願うこともあるでしょう。社会/政治への参画への架け橋は,こうした日常の中の「思い」だと私たちは考えています。この私の「思い」を声に出し,他者の「思い」に耳を傾けて,どのような社会を創り出していくべきかを考えて行動に移していく中で,市民としての成長や成熟が進んでいくことでしょう。
 ところが,いくつかの社会調査結果が表している通り,若者の中には「どうせ何を言ってもやってもムダではないか」との諦めの感情が一定の広がりを見せており,社会に対する「思い」を抱いても,その先の意見表明や行動につながっていかないということが見受けられます。若者が民主主義社会の一員として自分の「思い」を大切にして社会創造に関わっていくことを促すには,自らの声に耳を傾けられる中で「既に私も社会をつくる一員である」という実感を得たり,「思い」を具体的な活動として表してまちをつくる側に立つ中で「私たちにも社会に働きかけることができる」という手応えを得る機会を提供していくことが必要でしょう。
 この市民としての自覚と自信を若者が回復/獲得することを目的に,当会では2008年度から2018年度まで京都地域の高校生世代の若者を対象に「ユースACTプログラム」という問題解決プロジェクト実践型プログラムを主催してきました。ユースACTプログラムでは,参加した高校生が「用意された活動に参加する」ことから一歩先に踏み出し,自分や仲間の「思い」に立脚しながらまちづくりプロジェクトの企画・実施・評価に一貫して取り組んでいきました。大きな流れとしては,(1)自分の問題意識に「気づく」,(2)自他の考えを声に出して「分かち合う」,(3)思いをすり合わせながら自分たちで組み立てた企画を具体化して「動く」,(4)試行検証を繰り返したり,地域の様々な人々と結びついていきながら「動きを成長させる」という展開で示せます。
 若者である期間,特に中高生世代の時は「こども」から「おとな」への移行期であり,人格形成を大きく進めることになります。この人格形成のタイミングに,若き市民として過ごす日々を経験することは,その後の人生での社会との関わり方に大きく影響するではないかと考えています。また,地域/社会の多様な人々との交わりを得て,支えられる経験を膨らませることで,地域/社会への愛着や信頼も育まれていくことでしょう。自分にとって大切な地域/社会をよりよいものにしていきたいという自然な気持ちをバネにして,「まちのお客さま」(消費者)としてではなく,「まちの主(あるじ)」(能動的市民)として生きていく人々が増えていけばと願っています。
 こうした活動に興味関心を持たれる学生・院生の方を対象として,長期インターンシップ生の受入も行なっています。お気軽にお問合せください。

メンバー募集

学校機関や自治体等との協働取組

 現在,当会ではユースACTプログラムで蓄積した実践知を活かしつつ,学校や教育委員会,行政と協働する形で若者の社会参画を促すプログラムの提供を行っています。シティズンシップ教育として行われる場合もあれば,ユースワーク(若者支援)としてであったり,市民参加推進としてであったりと,その事業目的は様々ですが,それぞれに応じた形でアレンジするようにしています。お気軽にご相談ください。
 なお,当会では過去にERC(教育リソースセンター)を設置し,兵庫県におけるNPOと学校の教育協働の実態調査を行った上で,「深い協働」を実現している事例調査を行い,そこから見出された教育協働のポイントをリーフレット「教育協働ノススメ」(PDF)にまとめました。ご参考までにご覧いただければ,幸いです。

問題解決プロジェクト実践型プログラムの基本的な流れ

当会主催事業「ユースACTプログラム」で高校生は次のような流れで活動を進めました。問題解決プロジェクト実践型プログラムを実施する協働取組では、この流れを軸の一つとしつつ、主催される機関が設定される目的や各種条件を踏まえて企画検討しています。
キックオフセッション

参加者の高校生同士が関係をほぐした上で、自らの生活を省みながら、個々人の問題意識の種を探っていき、企画の核になる主題を明らかにします。

フィールドワークやNPOでのインターンシップ

高校生それぞれの興味関心に応じて体験活動に出向いて、人間交際関係を多様化させながら、自分が見えている世界を広げていきます。

企画づくりワークショップ

フィールドワーク等での体験を踏まえ、自分の問題意識を絞り込んでいき、プロジェクトの企画立案を行います。

第一次プレゼンテーション

高校生が自らの企画内容を地域の人々に向けて発表し、ブラッシュアップすべきポイントを見出していきます。

自分の考えを確かめる調査

第一次プレゼンテーションで受けたフィードバックを踏まえつつ、自分たちの問題設定や解決策の仮説の確からしさを見極めるためにフィールドワークやアンケート調査を行います。

ブラッシュアップセッション

フィールドワークやアンケート調査の結果から、いま一度企画内容を再考して、プロジェクトを組み立て直します。

中間報告会

プロジェクトごとに進捗状況を報告しつつ、課題となっている事柄いついて地域の方々や専門職の方々との対話を通じて解決方向を考えます。

実施準備

企画本番に向けて、プロジェクトごとにミーティングを重ね、準備を進めていきます。

企画実施本番

高校生が考えたプロジェクトを実行に移します。

振り返り

企画終了後、高校生自身にどんな学びや気づきがあったのか、このプロジェクトの企画運営は適切だったのかなど、スタッフと一緒に活動経験を振り返ります。

報告書の執筆

報告会に向けて、報告書の執筆を行います。

報告会

自分が通う高校の関係者や企画実施に関わっていただいた地域の方々をお招きしたり、活動に関心を寄せる方々を募って、活動内容や活動を通じて得られた成長、これからのチャレンジなどを発表します。

 

詳しく知りたい方は、以下のワークブックや報告書も合わせてご覧ください。

・ワークブック
「まちの跡取りの育てかた」(PDF 4.1MB)

・ユースACTプログラム 報告書(2008年度-2015年度)
2008年度 /2009年度/2010年度2011年度2012年度/2013年度/2014年度2015年度
※2009年度と2013年度の報告書はファイルサイズが大きいため、ウェブ公開していません。

協働取組の事例

尼崎市教育委員会「社会力育成事業」(2012年度〜2018年度)
尼崎市「あまらぶジュニア」(2015年度〜現在)

静岡市「高校生まちづくりスクール」(2017年度〜2019年度)

協働取組相談・依頼

他の形式による子ども・若者の参画の推進や,学校地域協働推進の取組では以下のような連携事例もあります。

奈良市「奈良の未来をひらく子どもワークショップ」(2012年度〜2013年度)
京都市「青少年モニター事業」(2011年度〜2017年度,受託:NPO法人ユースビジョン)

うらほろスタイル推進地域協議会「複合施設基本構想策定ワークショップ」(2016年度)

若者のシティズンシップ教育に関わる単発の「出前授業」では以下のような実施例もあります。

神戸市立御影中学校「リーダー研修」
立命館宇治高校・立命館高校「キャリア・サービス・ラーニング」(写真は立命館高校実施分)
立教大学コミュニティ福祉学部「ボランティア論」
尼崎市教育委員会「生徒会担当教員研修」

参加者の声

 「高校生の自分なんかに何が出来るのか」普段の学校生活で知らない間にそんな風に思い込んでいました。社会とのつながり?学生の視点?最初は何のことかさっぱりでしたが、色んなことを教えてくれる大人の人や一緒に考えてくれる大学生が高校生の僕に「可能性」を見せてくれました。そして、その可能性はいつしか自信に変わり、気が付けば僕は2009年度から2011年度まで、ユースACTプログラムに参加していました。
 年度を重ねるたびに、出来ることが増えていきました。それに伴って、少しずつ要求されることも難しくなり、時には壁に当たることもありましたが、関係者に支えられながら、最後までやりきることが出来たと思います。可能性を見せてくれるユースACTプログラムのスタッフ、その可能性を追いかけ行動する高校生、そして、そんな高校生を支え見守る関係者。そんな環境だからこそ高校生の僕は自信を持って活動できたのではないかと感じます。
 大学受験を控え、ユースACTプログラムを卒業するころには、「高校生の自分だからこそ何が出来るのか」とうずうずしながら考えていたことを思い出します。

山領 真広 さん(元ユースACTプログラム参加者)