新年のご挨拶「『理解すること』の困難から逃げない」

明けましておめでとうございます。
2025年の年頭に当たり,謹んで新年のご挨拶を申しあげます。

 「必ずしも共感したり同意したりする必要はない。理解すればよい。」主義主張を異にしている他者との関わりについて,そのように説かれることがあります。しかし,「理解すること」は容易ではありません。考えが異なっていく道筋を明らかにすることができても,他者がその道筋をなぜ歩むようになったのかはなかなか見えにくいからです。
 私たちの社会では分派化/分極化が進み,自らにとって異見を持つ人々との溝は広がり深まるばかりです。理解を求めて接近すれば,刺々しいやりとりに陥ることも少なくありません。そうすれば,「理解すること」への諦めや敵愾心が生じてしまいます。
 敵対的なコミュニケーションへと踏み外してしまわないためには,どうすれば良いのでしょうか。互いに理解し難いことを認めながら,議論につながらないような共同作業に何かしら取り組むことで関係性を断ち切らないことがまず求められるように思われます。関係性が温まっていく過程で,理解不可能性を生み出しているものを共に探っていく営みへと開かれていく可能性があるのではないかと考えるからです。
 隔たりのある人々の間で「関係性ののり代」となる共同作業の機会をいかに豊かに創造できるか。この課題に取り組む市民の働きを考えていきたいものです。

2025年 元旦
シチズンシップ共育企画
代表 川中 大輔