新年のご挨拶「学びの場の『免震構造』を問う」

明けましておめでとうございます。
2023年の年頭に当たり,謹んで新年のご挨拶を申しあげます。

 近代西洋音楽に対し,多くの民族音楽には「免震構造」がある。音楽学者の若尾裕は『親のための新しい音楽の教科書』(サボテン書房, 2014年)の中でそのように述べています。音楽の免震構造とは演じ手の〈うまいへた〉の差を吸収する構造を指します。この免震構造のある音楽空間では,〈うまいへた〉の基準では捉えきれない「おもしろい」表現があらわされると若尾は続けます。
 それでは,私たちの学びの場の免震構造はどうなっているでしょうか。こうした問いを自らに向ける時,特定の型に収まりきらない学習者を知らず知らずの内に〈うまいへた〉の基準で切り落としてしまっていないかと反省させられます。免震構造の不備のために見落とされていたり見失っていたりする独創的な表現に目を注ぎ,そこから新たな学びの場の形を見出していきたい。そう思わされます。免震構造のある学びの場でこそ,多様性を尊重する社会を創造していく感性/態度が育まれていくからです。
 学びの質や成果を捉える価値判断基準に弾力性を持たせながら,包摂型社会を先導していく市民としての成長/成熟が実現する学びのデザインを2023年も探ってまいります。

2023年 元旦
シチズンシップ共育企画
代表 川中 大輔